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| 1997年 秋 |
耐え難く思えた暑さも去ってしまえば名残惜しく、物悲しく思う間もなく、食いしん坊には嬉しい、実り豊かな季節となりました。
その昔、酒の「さかな」は「酒菜」と書かれていたそうです。
この「ナ」という言葉は「そえもの」という意味で、酒に添えるものの総称でした。
ですから昔は野菜や魚ばかりでなく、酒席に興をそえる唄や踊りも肴とされた、ということです。
酒と料理が密着しているフランスでも、「肴」にあたる言葉はないそうで、日本人にとって、酒がどれほど生活に溶け込んでいたかを示しているといえますね。
五穀豊穣のこの季節、日本の自然の恵みにはさすがに酒がぴったり。
さて、今宵は何を「肴」に一献楽しみましょうか。
多湿な風土の日本では、どこにでもはびこる「カビ」に頭をいためている方も多いかと思いますが、逆にカビを利用した知恵が、日本の食文化や生活を豊かにしてくれている場合も多く見受けられます。
カビには、病気の原因やものを腐敗させる「悪玉」と、ミソ、醤油、納豆などの素晴らしい発酵食品を我々に与えてくれる「善玉」があります。
日本酒も、実はこのカビの一種である麹菌を巧みに利用して造られた飲み物で、米麹を利用した酒造りは、弥生時代にすでに始まっていたそうです。今回は、この小さな小さな生き物たちのお話です。
日本酒を造る上で、米、水などの必要な材料のひとつに「酵母(こうぼ)」があります。
酵母は、米のでんぷん質からアルコールと炭酸ガスを作る働きをする微生物です。
酒の酵母にも、善玉と悪玉があり、昔は善玉酵母が多くいるといい酒になるが、悪玉酵母が多いと酒を腐らせることもあったようです。
この酵母、最初の発見者は日本人ではなく、ドイツ人のコルシェルトという、現代の東京大学の医学部教授でした。
たいへんな日本酒ファンであった彼は、明治9年に来日し、翌年にはもう顕微鏡を使い確認していたそうです。
そうした先人たちの研究により、明治37年、今の国税庁醸造研究所が設立され、良質の酒を造った全国の蔵から善玉酵母を採取し、培養して、全国の酒蔵へ市販されはじめました。
近年、吟醸酒造りの中で、一般に多く造られる酵母は「協会9号」といいますが、これは熊本県で採取されました。
また、ここ数年では、自社の蔵に住み着いている酵母(「家付き酵母」という)を分離・培養し、地の水、地の米にて醸造するという、こだわりの酒造りが多く見られます。
ちなみに、今年の全国新酒鑑評会では、長野県の蔵で採取された「アルプス酵母」で造った酒が金賞を多く受賞しています。
吟醸酒造りに使用する主な酵母を表にしました。
お買い求めの際は、参考にしてください。
| 酵母名 | 採取地 | 特徴 |
| 協会9号 | 熊本県(香露) | 短期もろみで華やかな吟醸香。 |
| 協会10号 | 東北地方 | 低温長期もろみで酸少なめ。独特の吟醸香あり。 |
| 協会14号(金沢酵母) | 石川県 | 酸少なく、あっさり味。 |
| 秋田流花酵母(AK-1) | 秋田県 | 吟醸香高く、酸少なめ。ふくらみのある味。 |
| 山形酵母 | 山形県 | 吟醸香やや高く、キレの良い味。 |
| アルプス酵母 | 長野県 | 特徴のある含み香。アミノ酸多め。 |
| 静岡酵母 | 静岡県 | 華やかで軽い吟醸香。 |
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